「親の顔がみてみたい!」と聞かれてどう思われますか?行儀のよくない子どもを想像されると思います。私も子どもの頃から先生や周りの大人達に言われていました。さぞ悪ガキだったのかと思われるでしょうが…
 「ひでき君は、明るくてとても素直な子ね、ご両親の育て方がよかったのね!家庭訪問でお会いできるのが楽しみ!」とある先生に言われました。現在の私をご存知の方は信じられないかもしれませんが本当なのです。家庭訪問が終り、次の生徒の家に送って行く途中「思っていた通りの素敵なご両親だったわ!お父さん、お母さんをいつまでも大切にするのよ!」と言われ、自分が褒められた様な嬉しい気持ちでした。
 中学卒業の謝恩会の時、凄く怖かった英語の先生は、「お父さん、お母さん、今までディック(名前をもじった私のあだ名)を、さぞ大事に育ててこられたのでしょうなぁ!お疲れ様でした!これからは是非私がデイックを育てたい!どうか養子にくださらんか?」と冗談とも本気ともつかぬ顔で両親につめより、二人とも大変困っていました。
 高校生になりアルバイトをするようになり、ただ楽しく働いているだけなのに、バイト先のおじさん達に「お前みたいな奴は、底抜けに明るい親御さんからしか生まれて来ないぞ!全く親の顔が見てみてぇや!」と・・・。

 厳しく叱られ、大げさに褒められ、明るくて仲の良い両親を見て育っただけの私。どんな時も仲良しな両親に育ててもらっているうちに、いつの間にか私にもその幸せオーラが染みついて、そのオーラのおかげで人に好かれ沢山の人に囲まれて、良い意味で「親の顔がみてみたい!」と言ってもらえる様な素敵な時を過ごしていました。

 さて現在の私といえば、子どもの頃の面影はなく、人様に褒められる様なことはあまりありません。社会に出て、いい事も悪い事も経験し、ちっぽけなプライドに凝り固まり、ほんの少しの傷を負った事で、両親の小言は勿論、人様のアドバイスも素直に聞けず、つまらない頑固者になっていってしまったのです。そんな自分の態度を、ある同僚に真剣に指摘されました。「貴方らしくない!恰好つけているつもりでも、返って窮屈にみえるよ」と・・・「このままでは育てて貰った両親に申し訳ない・・・生きなおして、あの頃の様に両親を褒めて貰えるような自分でありたい」と強く思う様になりました。今年で55歳になる男としては恥ずかしい話ではありますが…。

 まずは、両親との時間をもっと大切にし、結婚して56年経っても未だアツアツの彼らから幸せオーラを吸収することで、素直な自分を取り戻そうと頑張っています。食事に誘われればなるべくついて行き、毎年の墓参りも一緒に行き、草刈りを手伝いながら二人の仕草や語り合う会話を楽しんでいます。まだあの頃の自分に戻れてはいませんが、少しずつ素直になってきたのかな?と自分では感じています。
 二人とも今年で80歳になり、人生100年時代、新たな20年のスタート、一日一日を大切に生きていく、老後2,000万円必要問題などどこ吹く風か!と張り切っています。趣味のテニスは、週に二度も三度もあちこちのテニス仲間と謳歌し、月に一度は旅行を楽しむ等まだまだ元気です。これからも二人の幸せな時間が一日でも永く続くことを願い、共に時間を過ごし、人様を幸せにする術を学び、受け継いでゆきたいと思っています。

文責:永松 英樹