国分寺通信

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~最後の男旅~

~最後の男旅~

 まもなく息子が大学を卒業し、社会人として新しい人生を歩き始める。
これからは仕事や家庭、それぞれの生活が忙しくなり、こうして二人で旅行に出かける機会も、ほとんどなくなるだろう。だからこそ、今回の北海道スノーボード旅行は「最後の男旅」なのだと思っている。

 実家のある倶知安町、ニセコスキー場。
目の前に聳え立つ蝦夷富士、広大なゲレンデ、乾いたパウダースノー、そして雄大な自然。
滑ることが楽しみではあるけれど、実はそれ以上に「同じ時間を共有すること」こそが、この旅の目的なのかもしれない。

 リフトに揺られながら交わす他愛もない会話。転んで笑い合う瞬間。ゲレンデを見下ろしながら飲むホットショコラ。滑り終えたあとはホテルに戻り、ウエアーを脱ぎ、風呂に入ってから街へ出かける。夜のすすきのは、昼とは全く違う顔を見せてくれる。ジンギスカンの煙と香り、海鮮の輝き、ラーメンの湯気。そして何よりもビールが美味い。一日の疲れを流し込みながら、「今日はどこが一番上手く滑れたか」。そんな話を肴にグラスを重ねる。お酒を飲みながら過ごす時間は、いつしか“親と子”ではなく“男同士”の会話へと変わっていく。

 仕事の話、夢の話、心配事など。聞くことはあっても、答えを押し付けることはしない。
この旅では、私はただ隣にいるだけでいい。そんな何気ない時間のひとつひとつが、どれも忘れられない思い出になるだろう。けれど、本当に残るのは「共有できた時間」だ。それがあるだけで、これから少し離れた場所で歩んでいく息子を、安心して見送れる気がする。

 この旅が本当に「最後」になるかどうかは正直わからない。それでも、少なくとも一区切りの旅であることは間違いない。息子が自分の足で社会へ踏み出す前に、父としてではなく、一人の男として並んで滑れること。それだけで、この旅には十分過ぎる価値がある。

 帰りの飛行機から見る北海道の雪景色は、きっと今までよりも一層輝いて見えることだろう。
寂しさと誇らしさが入り混じった、忘れられない景色として。。。

文責:佐々木 俊巳

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