~目指すは執事のように~

 日本では馴染みのない職業、執事。彼らの仕事はお仕えする方の公私の隔てなく、お子様やご家族の送迎から会食場所のコーディネート、資産運用に至るまで様々です。執事・新井直之氏の著書を拝読し、お客様に寄り添い、何が最善・最良なのかを絶えず自問自答する姿勢に共感しました。

 数年前に地域でも有名で交友関係が広く、数百名の参列が予想される方のご葬儀を担当させて頂いた時の事です。奥様のどこか寂しげな表情と「家族を中心に近しい親族で送りたい」という言葉に違和感を覚えました。奥様の言葉通りに行ってしまって良いのか?本当にそれが心からのご希望なのかと考え、再度奥様の真意を訊ねました。「夏場の暑い時期にお越しいただく事が心苦しい、涼しい季節になったら自宅にお参りに来て下さればと思って・・。」と困ったように目を伏せる奥様に、最寄駅から斎場までマイクロバスでの送迎が可能な事や、日の暮れる遅い時間から通夜を始める事、全員が入る事が出来る大きな斎場にて冷たい飲み物や涼しげなお料理を用意し、おもてなしをする事などをご提案させて頂きました。「ご主人様の事を大好きだった皆様に、最後に直接お顔を見てお別れをしていただきませんか?」とお話しさせて頂きました。すると奥様は「主人もそれを喜ぶかしら・・・」と少し悩まれ、「やっぱり皆様に来て頂きたいです。主人に会ってもらいたい!」と皆様をお呼びする事を決心されました。そして当日ご参列いただいた沢山の皆様から「最後に顔をみてお別れし、お礼を述べることが出来た」と喜んで頂けました。ご葬儀後に「あなたの言った通りに、皆様にお顔を見てお別れしてもらえてよかった」と奥様よりお言葉を頂くことが出来ました。

 私は上述のご葬儀からお客様の仕草や表情、声のトーンなどから感じた違和感を見過ごさず、表面的な言葉では語られない「想い」を汲み取ることが大切なのだと改めて学びました。これからも、汲み取った想いを柔軟な発想力と様々な手段を用いて表現し、お客様とともに故人様をお送りできるよう力を尽くしていきます。全てのお客様にこちらの提案を受け入れて頂けるとは限りません。お客様が本当に望むものは何なのかを、その方の気持ちになってこれからも考え続けていく所存です。   

文責:笹木幹人