2023年11月10日(金)

~ありがとう~

 夏に義母が旅立ちました。20年前、初めて会った時の印象は「多趣味でパワフルな人」でした。女手一つで子供二人を育て上げ、還暦後は積極的にボランティア活動に励み、友人たちとゴルフや旅行に行き、お遍路をめぐっていました。読書家でもあり、季節の変わり目や旅先から手紙を書く筆まめな面もありました。大変頼りになる義母で、一緒に家電を買いに行き値段交渉をしてくれたり、時には夜中に虫を退治しに来てもらったこともあります。

 そんなしっかり者の義母が病気をきっかけに、今まで当たり前に出来ていたことが困難になり、出来ない自分自身に落ち込んでいきました。近所に住む私たちは毎週末、義母と一緒に買い物へ出掛けていました。痴呆が進み、会話のキャッチボールが難しくなると、夫が母へ声を荒げることもあり、帰りの車中では後悔をしていました。お喋り好きな母を覚えているだけに、衰えていく姿を受け入れるのが難しかったのだと思います。それでも夫は毎日欠かさず電話をし、時間があれば好物のちらし寿司や杏仁豆腐をお土産に、母の元へと顔を出していました。今まで育ててくれた母親へ息子としての感謝の形だったのでしょう。

 人との別れは突然にやって来ます。以前のように義母と楽しく過ごせた日々をもう一度と願っても、叶いません。今まで通りの生活が送れなくなること、居て当然の人がいなくなることの虚しさを経験し、当たり前だと思っていた日常は、とても有難い日々で成り立っているのだと思い知りました。義母を見送る時、自然と「お義母さん、ありがとうございました」と感謝の言葉と涙が出てきました。いつも我が家のことを心配し助けてくれたこと、どんな時も「どうにかなる、大丈夫」と励ましてくれたこと、義母に支えられた思い出がいくつも甦ってきました。

 井口葬儀店に勤めて2年。今日も元気に仕事が出来ること、美味しくご飯が食べられることを幸せに思います。これからの人生、当たり前に過ごせる日常に感謝し、常に「ありがとう」を心の中に持ち続けることが今の私にできる義母への感謝の形だと思います。

文責:藤田晴菜