今年6月、父の3回忌法要をコロナ渦という事もあり、私と妻の2人だけでお寺の本堂で執り行いました。ほのかな明かりの本堂は厳かな空気に包まれ、お経を拝聴している間は日々の慌ただしさを忘れて、しみじみと父との思い出や幼かった頃の事を想い返す時間となりました。
父は釣り、ゴルフ、ボウリング、囲碁将棋と多趣味で、家族よりも自分の趣味に生きた人でした。仕事が休みの日には早朝から釣りかゴルフに出かけてしまい、一緒に遊びに行った事などは数える程度です。そんな父でしたが私が小学2年生から始めた剣道に関しては、練習場への送迎や庭での打ち込み練習等、時間を見つけては付き合ってくれ、試合がある時には会場に足を運び応援してくれました。改めて思い返すと「一生懸命サポートしてくれてありがたかったな」と感謝の気持ちが湧いてきました。
法要が終わると、ほっこりと暖かで穏やかな心もちで座っている自分に気づきました。はじめは「一つの区切りだから…」とやや形式的な気持ちで三回忌を執り行いましたが、終わってみると父の優しさに触れ、感謝の気持ちで供養する時間をもらえたと感じました。
日々の生活の中ではこんなにゆっくりと自分の気持ちに向き合い、素直な心で父を想い出す時間がとれなかったと思います。改めて「法要を行って良かったな、父を想い向き合う時間は必要だったなあ」と実感しながら妻とお寺を後にしました。
写真に手を合わせる、お墓参りに行くなど法要以外にも故人を偲び、想う方法は人それぞれかと存じます。少しの時間であっても、故人を大切に想う時間を持つことは心を穏やかに保つのに有意義で、必要な事だと父の法要から教わったように感じます。
何かと利便性や効率を優先し、昔からのしきたりや習慣が蔑ろにされやすい昨今だからこそ、私が経験した気持ちの変化や感覚をお客様へお話しさせて頂き、今一度ご葬儀の意義や法要の大切さなどをお伝えしたい…。大切な方を亡くされたご家族様に葬儀を通して僅かでも心の平穏を取り戻していただけるようにご要望を真摯に受け止め、これからも僭越ながらお手伝いをさせていただきます。
文責:笹木幹人