世界で猛威を振るっている新型コロナウィルス。緊急事態が宣言され、1カ月近くが経過し、様々な業種への自粛要請で多くの企業が危機的状況になっています。社会の機能不全は長期化の様相を呈し、私たち葬儀業界でも自粛要請の影響で、火葬場に同行できる人数が制限され、葬儀の縮小化が進み、本来であれば、たくさんの方々に見送られるべき人のご葬儀を行うことが大変難しくなっています。そして、それに伴い生花、仕出し、返礼品などの関連業者にも影響が及んでいます。

 緊急事態宣言よりも前、感染が世界に少しずつ広がり始めていた時、私は「きっとすぐに治るだろう」「人は強い、きっとすぐにウィルスも封じ込める」と、対岸の火事のように現実味が今ひとつなく、ぼんやりと光景を眺めておりました。

 しかし、そんな中で、衝撃的だった「志村 けんさん」のコロナ感染による「死」。老若男女に愛されたお茶の間の大スターの、あっという間の「死」はコロナウィルスの恐ろしさを一瞬で知らせるところとなりました。多くの人を楽しませ、家庭に笑いを届けてくれた方の無言の帰宅は、あまりにも虚しく、そして何よりも、お兄さんの言葉は、葬儀者として衝撃的で胸に刺さる思いでした。「病院の霊安室に行ったが、本人の顔を見ることができなかった」「お骨も拾うことができなかった」と・・・
 ご遺族様にとって、お骨を一つ一つ拾い上げることは、死を受け入れることの大切なプロセスの一つです。志村さんのご遺族はそれができず、本当に無念であったことだと思います。「もしかしたら生きているのかもしれない」「亡くなったのは、何かの間違いかもしれない」と考えてしまう方もおられたかもしれません。

 今、日本が諸外国に比べ、感染者数、死亡者数共に少ない現状で留まっていられるのは、皆様が生活の中で、たくさんの事を自粛していることが大きな力になっています。そして、そんな中で現在も変わらず、懸命に働いている医療従事者の方々、運送業者方々、食品スーパーの方々などが、私達の生活を支えてくれています。そうした方々の想いと決意を無駄にしない為に、これ以上、悲しい思いをされる方を増やさない為に、一刻も早い終息を迎え、来年の今頃には、親しい人達と力一杯手を握り合えるように、今はただ自分にできる事を精一杯行ってゆこうと強く心に思っています。これを読んでくださる皆様のご健康とご多幸を心から強くお祈り申し上げます。

文責:佐々木 俊巳