五十の齢を過ぎ、このところ親戚の伯父さん、伯母さん、友人のご両親など他社の葬儀に参列させて頂くことが多くなりました。この仕事をしているので、葬儀社のスタッフの仕草につい視線がいってしまいます。そのたびに「今日は仕事ではないのだ・・・」と自分に言い聞かせています。

 ある葬儀社の会員となっておられた友人のお母様が亡くなった時の事です。最愛のお母様のご葬儀、不安だらけで心配のあまりに葬儀の相談に立ち会って欲しいとお願いされました。こういう経験は以前にもあり、自分の職業は表に出さずに相談を聴いておりました。淡々と相談が進み、見積書の提示になった時の事です。「では、この見積もり金額の15%をお通夜までにお支払ください」との担当の方の言葉に驚きました。“えっ!前受金?今まで納めた積立金があるのに…”と納得がいきませんでした。

 翌日、会社で社長に報告したところ「よそ様にはよそ様のやり方があるさ、それはウチでも前受金や準備金が頂ければ経営的にはどんなにか楽かと思うよ。でも、大切な方を亡くされて悲しみもいえぬ間にやっとの思いで葬儀の相談をして、そのあとすぐに、“先にいくらかください”ってそんな信頼のない事、言えるかい?大切なお客様にそんな不安は感じさせられない、なによりも大事な君たちにそんな事は言って欲しくない。地元に育てて頂いた葬儀社だからこそ、私たちにしか出来ないお客様との信頼関係があるのだよ。何があっても最後の砦には私がいる、お客様を信頼し、常に全力を尽くしなさい!」
力説する社長の話を聴きながら、この人に出会い、この会社に育てて貰って本当に良かったと心から思いました。

 この街で過ごし始めてもうすぐ30年を迎えます。学生時代にお世話になった方々とも今も変わらずにお付き合いがあり、私を支え続けてくださっています。この国分寺に生き、生かされ、充実した毎日を過ごせていることに感謝しております。社長、諸先輩、同僚のみんな、そして地域の皆様、右も左も分からずに、ただウロウロしていた新人時代から今日まで私を育てて頂き、本当にありがとうございます。ご教授頂いた事、助けて貰った事を忘れずに、これからも共に歩ませて頂けたらと願ってやみません。皆様の笑顔のために、人として、葬儀者として日々研鑽を積んでいく事を誓い、今日もこの街に生かされていることに心から感謝申し上げます。どうかこれからもよろしくお願いいたします。

文責:永松 英樹