7月23日、東京オリンピックの開会が宣言された。 開催か中止かを散々討論された一大イベントの開幕です。 9年前、東京オリンピックの開催は全国民の悲願だったことをどれだけの人が覚えているでしょう。O.MO.TE.NA.SHIが一世を風靡したあの年は、いまだ東北地震の爪痕生々しく、東京オリンピックの決定は当時明るい未来の希望に思えました。 
 2020年1月未知のウィルスを乗せた船が、あの港に着く日までは・・・。 

 こんな日常が訪れるなんて、誰が想像したことでしょう。 外出の際は全国民がマスクをして、学校や会社はリモートになり、冠婚葬祭は人の密集を避けるため縮小や中止の一途をたどり、1年越しで開催された、東京オリンピック。 厳しい日本の夏の炎天下の中、各国の選手・関係者・メディアの方々は、本来であったらもっとたくさんの日本を見ていただけたことだと思います。外出禁止を敷かれた中、選手村と一角のホテルでの滞在は、さぞ狭苦しく感じたのではないでしょうか・・・。
 その中でも、コンビニのおにぎり、冷凍餃子、送迎バスを見送る日本人の親子、ほんの小さな日本の日常をSNSで喜びと共に世界へ伝えてくれる各国の人々に、私は感謝の思いでいっぱいでした。 

 流れる汗、うれし涙、悔し涙、選手たちの一挙一動にテレビにかじりつく毎日に私の家族は若干あきれ顔でした。逆境といえる中で開催され、今日この日にむけてたゆまぬ努力と準備を積み上げてきた選手たち、一瞬で決まるその集大成。テレビから流れる選手たちの息遣いに手に汗を握りました。しかし沈黙の観客席に目を向けると、涙がこぼれそうになります。本来であれば満客の声援の中に貴ばれたはずの選手なのに・・・。 
 オリンピックの開催には、賛否両論あるところでありましたが、1年延期されたことにより選ばれた選手、逆に選ばれなかった選手、それとはまったく切り離されたところで、選手から感動をもらえたことに感謝を伝えたいと思います。 

 わたくしたち葬儀社も、このコロナ禍の中、人生の集大成を持って旅立たれる故人様をお見送りしていただく職業で、葬儀の執り行いにも賛否両論です。 沈黙の斎場の中、故人を惜しみ静かに涙を流されるご家族ご親族様の一片の後悔のないお見送りのために、この世情の中でも、私たちもたゆまぬ努力と準備をもって、精一杯お力添えをしていこうと心を引き締めさせられたオリンピック・パラリンピックでした。 

文責:佐々木俊巳