初対面で聞かれやすい「趣味はありますか?」という質問に、私はずっと「ありません」と答えていました。以前友人から「長く続いている事があるなら趣味と言えるよ」と言われ、子どもの頃からファンだったアーティストが想い浮かびました。

 遡ること40年前、国民的アイドルグループのファンだった姉を真似て私も大ファンとなりました。当時はまだ小学生、テレビや雑誌で観るだけでしたが高校生になる頃には、ライブを観るために日本各地へ遠征するほどの熱の入れようでした。残念ながらグループは解散、テレビや雑誌で見かける事もなくなりました。当たり前の事が突然消えてしまい、何も手につかない程の落ち込みでした。
 少し落ち着いてきた頃、ボーカルがソロアーティストとして復活することになったのです。「グループでなくては意味がない」という想いもありましたが、慣れ親しんだ歌声は私を元気にしてくれました。

 先日、久しぶりにライブへ行ってきました。嬉しい時悲しい時に支えてくれた数々の楽曲が、心に沁み趣味を越えた宝物だなと改めて実感しました。永く同じアーティストを好きでいると、楽曲を聴くだけで自然と想い出が蘇ってきます。一曲一曲に想い出があり、日記やアルバムを見ているかのように振り返ることができます。自分のみならず家族や友人も、アーティストを観て私を想い出し連絡をくれることも少なくありません。人との絆も結んでくれて本当に有難く感じます。

 私は事務職のため、直接ご家族にお会いすることや式の場に立会うことはありませんが、弊社では毎日朝礼を行っており、担当者からの報告を聞いています。愛用していた品物や趣味の物を式場に飾り、好きだった音楽や映像を流すなど、聞いているだけで心が温まります。永く愛用されたものを通して、ご家族やご縁のあった方々の心の中で、大切な人との想い出が永遠に生き続けていくと思います。私も大好きな曲が流れる中で、自分の愛した人や物に囲まれ送られたいと思います。

文責:枡澤美絵